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31.事件(1)

2011.12.01.Thu.01:01
私が高3だった夏休みに、その事件は起こりました。

私たち3年生は、夏休み前に部活を引退して、ようやく受験勉強に取り組み始めた時期でした。自宅で勉強したり、予備校の夏期講習に参加してセンター試験の対策をしたり、今までの遅れを取り戻そうと必死だった時期です。

その日は午前9時から、校庭の隅にあるテニスコートで、2年生の新部長涼子が中心になってテニス部の午前練習が行われていました。
参加者は、顧問の松岡先生のもと、テニス部員は前部長3年生香織、涼子以下2年生4人、1年生5人の合計10人でした。

校庭でも校舎内でも、他の部活の予定はありませんでしたし、向かいの中学校舎は完全に閉鎖されていましたから、テニスボールの弾む音とテニス部員のかけ声が断続的に聞こえるだけで、他は人気の無い静かな学校でした。
夏休みのことなので、その時間に学校に来ていた教師は、テニス部顧問の松岡先生ひとりでした。

しばらくボール出しを手伝っていた先生が、30分ほど経ったところで、ちょっと用事を済ませてくるからと言ってコートを離れました。
「無理をしないように。水分補給に気をつけて」
涼子部長にそう言い残して、校舎の横の通路から入口方向に向かったそうです。

そのすぐ後、3年生でひとりだけ練習の応援に来ていた香織が、
「くらくらする。 熱中症かもしれない。 受験勉強で体がなまったのかしら。 部室で休んで、そのまま帰るかも」
そう言い残して、コートから去って行きました。

それから更に30分ほど経ったとき、2年生副部長の亜紀が校舎の大時計を見上げて涼子に言いました。
「いま10時ね。私、ちょっとお手洗いに行ってくる」
「あっ、先輩。私も一緒にいいですか?」
一年生のひとりが手を挙げたので、二人は一緒に校舎に向かいました。
涼子が自分の腕時計を見ると、確かに10時丁度でした。
二人は、すぐに戻って来ました。

その後も練習は続きましたが、部員の疲れが見えてきて、涼子がそろそろ練習を切り上げようと思った頃になっても、先生は帰ってきません。
「どこに行ってしまったのかしら」
真夏の炎天下にいつまでも部員を待たせておくことはできないと考え、涼子は自分の判断で、部活終了の指示を出しました。時計をみたところ、丁度11時だったそうです。

それから皆でネットを校舎地下の用具室に納め、同じく地下にあるシャワー室で汗を流しました。
そのときには、3年生香織の姿もバッグも部室に見当たりませんでした。 具合が悪くて、着替えて先に帰ったのでしょう。

汗でびっしょりのテニスウエアを脱いで熱いシャワーを浴びた後、半袖セーラー服に着替えた部員たちがすっきりした顔で部室に集合したのは12時少し前でした。
伝統あるテニス部は規則が厳しく、夏休み中でも登下校するときは、標準セーラー服と校則ショーツを着用することと決められていました。

「今日はお疲れ様でした。次の部活は、あさって9時から」
部長の涼子と副部長の亜紀が見送るなか、部員が挨拶して三々五々部室から出て行き、最後に涼子が部室の鍵を閉めました。

「おまたせ。さあ、帰ろう」
涼子がさそって階段を昇りだしたとき、亜紀がこんなことを言いました。
「ねえ、今日学校にいるのは、松岡先生とテニス部員だけだよね?」
「そうだよ?」
涼子が何気なしに答えると、亜紀がこう言い出したのです。
「あのね、さっき不思議なことがあったのよ」


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