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17.事件の真相(1)

2012.05.06.Sun.00:00
「美咲さん、ほんとうにすいませんでした」
冬彦さんがぺこりと頭を下げました。
「推理を確かめたいという僕のわがままのために、海上保安庁の船まで用意してくださったうえに、あんな不快な思いまでさせてしまって・・・。 中身がブルマーだという推測はついていたんですが、あの臭気までは考えていませんでした」

「いいのよ。 全然気にしていない。 けっこう面白かったし」
美咲さんはジョッキを持ち上げ、ぐいっと生ビールを喉に流し込みました。

ここは中目黒の個室居酒屋。
あの日、ポリバケツを埋め戻して憮然とした表情で黒島から戻って来た私たちが品川埠頭で別れるとき、冬彦さんが、お礼とお詫びを兼ねて、是非一席設けたいと申し出たのです。
水曜日の今日は美咲さんが非番だったので、夕方、三人が集合して生ビールを飲み始めたところでした。

「お礼とお詫びの印です。 今日のお勘定は全て僕がもちます。 美咲さん、どんどん飲んでくださいね」
「何言ってるのよ、今年銀行に就職したばかりの安月給のくせに、大丈夫? ほんとにいいの? じゃあ、遠慮なくね!」
美咲巡査長は自分も安月給のくせに一応遠慮めいた発言をしましたが、その視線は早くも高級日本酒メニューの方向に走っていました。

「それにしても、すごい匂いだったよね。 雑菌が繁殖したのね。 汗かいたやつをそのまま賽銭箱に放り込んだ子がいたんじゃないのかな」
熱心にメニューを眺めながら呟いた美咲さんの言葉に、7年前の愛美の顔が浮かびあがり、私に向かってにやりと笑いかけたので、眼をつぶって振り払いました。

ほぼ一気飲みで生ビールの中ジョッキを空けた美咲さんは、
「次はこれ飲もうっと。」
彼女が指差した写真は、アラブの富豪でも逡巡する様な超高級、超高額大吟醸酒の一升瓶でした。

メニューの値段をチラ見した冬彦さんは、まるでやっとの思いで掴んだ客からドンペリ10本あなたの給料から払っといてねと言われた売れないホストのような表情で黙っていました。

美咲さんはご機嫌で、一升瓶に加えてこれまた高級なズワイガニ姿盛りと大トロ生ウニ5人盛りと限定佐賀牛炭火焼を注文すると、
「ねえ、冬彦先生。 どうして財宝はブルマーだと考えたの? それに、どうしてあの場所に埋まっているって判ったの?」
「それはですね、tomokoちゃんの話のなかで、」
「おっと、来た来た。」
冬彦さんの話の途中なのに、美咲さんはお部屋に届いた一升瓶に眼を奪われ、ひったくるようにして抱きかかえると自分のグラスにどぼっと注ぎました。
「あ、あ、あ、こぼれる。 そんなにいっぱい注いで・・・。 少しずつ味わいましょうよ、美咲さん」
「何言ってるのよ。 心配しないであなたも飲みなさい。 ね?」
まるで自分がおごっているような口振りに、冬彦さんはもう諦めたような表情で、
「僕もそれ、頂きますよ?」
ジョッキを持ち上げ、残っていた生ビールを一気に飲んで空にしました。
なんだか、いつもよりピッチが早い気がしました。

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