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6.7年前の夏休み(2)

2012.04.06.Fri.00:00
それから三日後、私たちは午前10時少し前に品川埠頭に集合しました。

行きの船は午前10時と午後3時一便ずつだったので、私たちは午前10時発の船に乗ることにしたのです。 帰りは黒島発11時です。片道30分くらいですから、島に30分は滞在できます。 神社にお参りするだけなので十分でしょう。

岸壁に横付けされた船は、最大14人乗りの小型クルーザーで、もともとは白く輝く最新鋭の船舶だったのでしょうが、長年使用されたせいか、ところどころペンキが剥げてみすぼらしく、あまり修繕にお金をかけていない感じがしました。

私たちが岸壁から掛けられた梯子を渡って船室に入ると、もうすでに女の子が8人乗り込んでいて、行儀よくベンチ椅子に座っていました。
でも、見たところ高校生は私たち四人だけで、あとはどう見ても中学生か小学生です。

「なんだよ、ガキばっかじゃんか。」
自分より子供っぽい女の子の群れを横目で見て、口の悪い愛美が囁きました。
「女子高生は来ないのかよ。」

「黒島詣(もうで)は低年齢化が進んでいるのよ。」
麻衣がどこかのギャル雑誌で仕入れてきたようなことを言いました。
「そもそも、今時、体育でブルマーは使わないでしょう? だから中学生や小学生が、見せパンで使ったブルマーを奉納にくるのが普通なのよ。 うちの学校は中学まで体育でブルマーを穿かされるけど、そんな学校珍しいのよ。 ショーツの色にもうるさいし。」
「でも、恵子先生が高校生の頃は、夏休みになると船の前に女子高生が長蛇の列で、一日何便も船が出ていたらしいよ?」
「それって7年くらい前じゃない? その頃はまだ、体育でブルマーを使っている学校が多かったんじゃないのかなあ。」
「そうかもね。」
そんな会話を交わしているうちに、出航のベルが鳴り、船のエンジン音が大きくなりました。出発時間です。

そのとき、舷側に人影が現れ、ひとりの中年男性が飛び乗ってきました。
どかどかと船室に入り、隅のベンチにどっかり腰を下ろしたその男は、じろりと辺りの少女たちを見廻すと「ふん」といった馬鹿にしたような表情で窓の外に顔をそむけました。

一応、背広を着て白いワイシャツにネクタイを締め、黒い書類かばんを持っていますが、てかてかのオールバックの頭といい、病的に黒い顔に鋭く光る狐のような細い眼といい、まともな勤め人とは思えません。
こんな人種が何のために黒島に行くのか分かりませんが、まあ、私たちには関係ないことです。

私たちはぞろぞろ船室から出て、後部甲板のオープンデッキに立ちました。
船がゆっくりと動き出しました。海風でみんなのTシャツが膨らみ、髪の毛が舞い上がります。
品川埠頭から出発したクルーザーは、ぐんぐんスピードを上げると、東京湾の中心に向かって一直線に走っていきます。
船の後ろに続く白い飛沫の向こうに、品川の高層ビル群がどんどん遠ざかっていくのが見えました。
「うわー、気持ちがいい! やっぱり来てよかったぜィ!」
茶髪を潮風になびかせ、エンジン音に負けないような大声で愛美が叫びました。

黒島行き

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